ABOUT2025

島根県障がい者文化芸術活動アート作品展

〈 主 旨 〉

令和7年度島根県障がい者アート作品展 は、文化芸術活動を通じた障がい者の自立と社会参加を推進しています。この度のアート作品展にご応募いただいた作品を審査し、受賞作品を掲載させていただきます。

[ 主 催 ] 島根県 / 島根県障がい者文化芸術活動支援センター アートベースしまねいろ
[ 協 力 ] 社会福祉法人 島根県社会福祉協議会 / 島根県知的障害者福祉協会 / 島根県立大学・島根県立大学短期大学部
[ 後 援 ] 公益財団法人しまね文化振興財団 / 島根県障害者社会参加推進センター
[ お問い合わせ先] 島根県障がい者文化芸術活動支援センター アートベースしまねいろ 〒695-0024 島根県江津市二宮町神主1964番地31(社会福祉法人いわみ福祉会 総合福祉施設ミレ青山内) ℡080-5756-3225(担当:渉/三澤)Fax0855-54-3101 Mail: artbase@shimaneiro.jp

受 賞 作 品

全 体 講 評

福井 一尊

「色と形に宿る、一人ひとりの心の軌跡」

本年度の展覧会には、絵画、書、彫刻、工芸、写真など、多様な分野から420点の作品が寄せられました。県内各地の施設やご家庭、そして個人の創作活動の場で生まれた作品がこうして一堂に会し、最高の会場で、多くの皆様にご鑑賞いただけることを大変嬉しく思います。出品にご尽力いただいた作者の皆さん、支援者の皆さんに心より御礼申し上げます。

今年の公開審査会で、まず強く感じられたのは、表現の自由度と幅のさらなる広がりです。今年の作品には、初めてデジタルアート分野の応募もありましたし、モチーフや素材の扱い方に、以前にも増して大胆さと独自性が見られました。とりわけ、手の動きや色彩に宿る生活の息づかいがそのまま作品に刻まれており、審査を進める時間そのものが、作者一人ひとりとの対話のようでもありました。

近年、生成AIの急速な発展によって、私たちの生活は便利になる一方で、「人の表現とは何か」という問いが社会のあちこちで語られるようになりました。物価高や自然災害の多発、国際情勢の揺らぎなど、日常生活にも不安定さが見られる中で、今年の作品には、生活の中の小さな喜びや、心の奥にある願い、そして自分自身の世界を肯定する意志が、例年以上に丁寧に表れていたように感じます。こうした作品を前にすると、どれほど社会が変化しても、手を動かす行為が人に与える安心感や自己肯定感は失われないのだと改めて気づかされます。

特に金賞を受賞されました二作品には、作者固有の世界観が力強く宿っています。技法の巧みさ以上に、その人でなければ決して生まれ得ない視点や色彩感覚が作品全体を支えており、まさに唯一無二の表現が持つ生命力を感じさせます。AIがどれほど洗練されても、人の内側から湧き上がる衝動や、素材に触れながら形を探る時間は、決して代替されることのない創造の源であると実感します。それと同時に、日頃から作者の生活や創作を支えている支援者の細やかな関わりがあってこそ生まれる表現であることを再確認し、その姿勢に深い敬意を表します。

本展は今年で15年目を迎え、その間、県内でも地域社会や生活の中で変化が感じられます。しかし本展の本質は変わりません。一点一点の作品に宿る「その人だけの表現」を正当に評価し、来場者の皆様と共有することです。どうか作品にもう一歩近づいて、色や形の重なりに目を凝らし、作者の息づかいを感じながら鑑賞していただけましたら幸いです。

櫛野 展正

障害のある人が福祉施設の職員に手渡している手紙の集積や職員をモティーフにした人形など、支援者との豊かな関係性を象徴するような作品と多く出会うことができました。

これは、アートが単なる自己表現の手段に留まらず、他者との繋がりという目に見えない絆を可視化する力を持っていることを示しています。これらの作品は、施設という日常の空間で育まれた、人間的な温かさや相互理解の深さを観る者に雄弁に伝えてきます。

それらをどう社会へ届けていくかは、支援する人たちの腕の見せ所です。そうした意味でも、木京雄太さんが日々の遊びの中で発する音を支援者が写真と音声で記録した「ゆうたさんのおと」は、支援者によるアウトプットの好例と言えるでしょう。

この作品は、日常的な行為の中に潜む創造性を、支援者の鋭い観察眼と工夫によって「作品」へと昇華させています。特別な技術や画材を用いる必要はありません。今後も、こうした関わりの姿が顕在化するような表現に出会えることを期待しています。

川西 由里

川西 由里

3年ぶりに審査に参加し、様々な表現に出会える充実した時間を過ごしました。公開審査の場で、支援者の皆さんから作者の日頃の様子をうかがうことで、はじめて見えてくるものも多く、もっとたくさんの方のお話をきいてみたいと思いました。

入賞した作品は力作揃いですが、それ以外の作品にも独特のこだわりがあります。ご来場の皆様はぜひ、ご自分の感覚でピンと来る作品を探してみてください。また、作者本人が額装や展示も行う場合と異なり、支援者や主催者が「どう見せるべきか」に頭を悩ませるのもこのアート展の特徴です。多くの作品を見比べながら作品そのものの個性を楽しむと同時に、プロデュースのあり方についても考える機会としていただければと思います。

岩﨑 靖

今回初めて審査委員を務めさせていただきましたが、400点以上もの障がい者の皆さんの作品を一度に鑑賞したのも初めてのことでした。
皆さんの作品は、ご自身が好きなものやその時の気持ちを素直に表現したもの、自分なりのこだわりがあるもの、素材や表現方法に工夫がされているもの等さまざまでしたが、それぞれが楽しみながら創作活動をしておられる様子が想像できる作品ばかりでした。
また、審査会では、作品制作において支援員の皆さんが助言や手助けをしたり、作品の見せ方を工夫するなど、一緒になって取り組んでおられる様子も垣間見ることができました。

このような素晴らしい作品たちを目にすることができる機会が増え、県民の皆さんの日常生活を彩ることができるよう、県では引き続き、障がい者アートの活動を広めていきたいと考えています。皆さんのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

髙岩 綾子

今年も東部・西部そして隠岐から数多くの素晴らしい作品が集まりました。
島根県独自の公開審査という形で、1日かけてオープンの場で審査委員の先生方と支援者の皆様から作者の思いや背景を伺いながら選考しています。
選考するにあたっては作品の優劣をただ決めるのでなく、それぞれの作品が持つ「伝える力」「心を動かす力」を大切に受け止めたいと考えています。
そして「世界に一つしかない作品」を多くの皆様にご鑑賞いただき何かを感じ取っていただきたいです。

3日間の島根県立美術館ギャラリーでのアート作品展の開催後、受賞作品を巡回展として来年2月20日から島根県芸術文化センター「グラントワ」多目的ギャラリーでも開催いたします。たくさんの皆様にご来館いただきたいと思います。

最後に本展の開催にあたって尽力していただいた関係者の皆様、ボランティアの皆様、そして作品を制作していただいた皆様に心から感謝いたします。

青戸 貴子

島根県での審査会に初めて参加いたしました。「公開審査会」では出品者の日常や制作の状況や背景などを知ることができました。

このような審査会は、島根県が初、その後、静岡県が続き全国では2県とのこと。障がい者アート作品展公募展として、交流がもてる貴重な機会でした。出品者は作品制作をすることで喜びあふれ、個性を存分に出しておられます。鑑賞する側としてもとっても豊かな気持ちになりました。作者本人の意欲や努力はもちろん、支援者の方々の見守りやご尽力も大きいと思います。それら全てにおいて楽しめるアート作品展です。