〈 主 旨 〉
令和4年度島根県障がい者アート作品展 は、文化芸術活動を通じた障がい者の自立と社会参加を推進しています。この度のアート作品展にご応募いただいた作品を審査し、受賞作品を掲載させていただきます。
[ 主 催 ] 島根県 / 島根県障がい者文化芸術活動支援センター アートベースしまねいろ
[ 協 力 ] 社会福祉法人 島根県社会福祉協議会 / 島根県知的障害者福祉協会 / 島根県立大学・島根県立大学短期大学部
[ 後 援 ] 公益財団法人しまね文化振興財団 / 島根県障害者社会参加推進センター
[ お問い合わせ先]
島根県障がい者文化芸術活動支援センター アートベースしまねいろ
〒695-0024 島根県江津市二宮町神主1964番地31(社会福祉法人いわみ福祉会 総合福祉施設ミレ青山内)
℡080-5756-3225(担当:渉/三澤)Fax0855-54-3101 Mail: artbase@shimaneiro.jp
受 賞 作 品
全 体 講 評
福井 一尊
12年目を迎えた本展に、島根県内全域から347点のバラエティーに富んだ作品が集まり、こうして島根県立美術館という県下最高の舞台で多くの来場者にご覧いただけますことに、作者をはじめ関係の皆様方に御礼申し上げます。
さて、昨年度は、コロナウイルスや美術館改修の影響から、オンラインの審査会&展覧会でしたが、今年度は実物の作品を見て、対面で行えた公開審査会がとても楽しく、充実した時間となりました。実際の作品にはやはり力があります。デジタル画像では感じられなかった存在感、佇まいがあることに、改めて気付きました。特に43点の受賞作品は、どれも芸術的な訴求力が強く感じられる秀作です。審査委員会でも、金・銀・銅賞の選考が難航するほど、その力はレベルが高いといえます。
そのような中で金賞となりました清水信博さんの「お尻コレクション」は、女性の後ろ姿を独特の視点で捉えた絵が64枚集められた大作です。作者の強い個性がしっかりと出し切れていて、見る者を圧倒します。同じく金賞の坂本大地さんの「ONE STAR CHILD」は、作者が生み出したアイドル歌手が何人も描かれています。それらはCDジャケットや雑誌の1ページとなって各部分を構成し、作品全体が、作者が作り出した憧れの世界観で満たされています。この2点の金賞作品に共通するのは、この作者ご本人でなければ絶対に生み出せない世界を作り出していることです。同じ障がいを持っていても、年齢や環境や用具が同じであったとしても、決して他の人では生み出せない表現になっています。これは、まさにARTにとって何よりも大切なことではないでしょうか。アートとは、個性であり、概念からの逸脱であり、自由なのです。それを本展では正当に評価します。ご鑑賞いただきます皆様には、その作者でなければ誕生しなかったかけがえのない1点1点を是非お楽しみください。アートを鑑賞する醍醐味とは、自分にはない価値観との出会いを楽しむことなのですから。
出品作品を眺めておりますと、今日も全県内の各ご家庭、施設、また学校において、作者が手を動かし、自分の作品の中に広がる世界で心を遊ばせている姿が脳裏に浮かんで、私の心は躍ります。そして素敵な作品に出会えた背景にある、支援者の日々の環境づくりへのご尽力と、心身の調和的な生活を支える意欲とセンスに敬意を表します。
櫛野 展正
金賞を受賞した清水信博さんの『お尻コレクション』のように、「描かずにはいられない」という強い衝動性のある作品が賞を受賞したように思う。こうした性的欲求が表現された作品が本公募展の場に出てくるためには、作者の心情を理解し、一緒に面白がってくれた支援者の存在があったからこそなのだろう。
丁寧に額装される作品が増えてきた一方で、障害のある人の生活から生み出された狂おしいほどの強度を備えた表現が少なかった点は残念に感じた。机に向かってつくられる表現だけが「作品」ではない。障害のある人たちが自室等でひっそりと営んでいる儀式的行為の中にも、表現の原石は眠っているのかも知れない。傍で見守る支援者は、そうした目を養うことにも尽力してほしい。次回は、審査員を困らせるような作品たちとの出会いがあることを期待したい。
川西 由里
月並みな感想ながら、やはり実物を前にしての審査は楽しい!と改めて思った。絵具の濁りやムラ、線のゆらぎやかすれ、立体作品の凹凸などから、作った人の息遣いや熱量、あるいは繊細なこだわりが感じられる。また、審査員どうしで意見を交わしながら見ることで、より多角的に作品をとらえることができる。ご来場のみなさんにもぜひ、気になる作品に近づいて細部を観察したり、周囲の人と話し合ったりしながら、展覧会を楽しんでいただきたい。
金賞の作品にはいずれも主題に対する作者の愛が表れていて、楽しみながら描いているのが伝わってくる。作品の向こうにある生き生きと充実した創作時間が想像でき、見ている方もウキウキとしてきた。この高揚感の伝播が、アートが持つ力のひとつだろう。
一方、小さな画面に引かれた細い線に、たまらない愛おしさを感じることもある。万人に注目されるものでなくても、知らない人どうしの作者と鑑賞者が、なぜかピンと反応してしまう、そんな出会いがあるのが、この障がい者アート展の面白さだと思う。
大下 弘之
このアート作品展に出展される作品は、大きなもの、細やかなもの、緻密なもの、カラフルなもの、質感にあふれたもの、無機質なものなど、本当に多種多様で、まさしく作者の個性を感じられるものばかりです。
私は、こうした作品を見て回りながら、「この作品は、どのような場所で、どんな人が、どのようなものに触発されて作ったのだろうか」など、様々な想像を巡らせました。
コロナの中で、人同士が直かに接する機会が減っていますが、作品を通じた出会いは、その人の新たな一面を知るきっかけにもなると思います。ぜひ、多くの方に作品に接していただき、アートの素晴らしさはもちろんのこと、「アートを通じた出会い」も体感していただければ、嬉しいです。もちろん、リアルな出会いにつながれば、最高ですね。
最後に、障がい者の皆様のアート活動が更に広がっていきますよう、また、多くの方々にご鑑賞いただきますよう、今後とも皆様のご理解ご協力をよろしくお願いいたします。
髙岩 綾子
今年は2年ぶりに島根県立美術館でアート作品展を開催することになり、多くの作品に直に出会える喜びを感じております。毎回、作品との出会いは楽しみであり、驚かされ無限大の可能性に感動しております。障がいのある人達が「自分ができること」を生きている証として表現し、アート作品展で多くの人達に見ていただける、それはとても大事な機会だと思います。ぜひご来館いただき作品に出合い、何かを感じていただければうれしいことです。展覧会を開催するにあたり、関係者の皆様にご尽力、ご協力をいただき深く感謝申し上げます。